デイリーニュースーつまみ食いー

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ペルーでTPP発行! あれ?既に合意してたんじゃなかったっけ??日本への影響は?

こんにちは。Yuです。

このブログでは日々のニュースをピックアップ、少し深堀をして皆さんにお伝えをするものです!目で追うだけになりがちな時事ニュースですが、少し立ち止まって今後も使える知識にしていきましょう!

今日のテーマは、「ペルーにおけるTPP発行」です。

=日本経済新聞記事引用=
南米ペルーで19日、環太平洋連携協定(TPP)が発効した。発効は8カ国目。7月14日に国会が批准を可決していた。ペルー政府は綿のTシャツやアボカド、乳製品などの輸出に弾みがつくと期待している。
TPPは関税撤廃や、知的財産などの統一的ルールにより自由貿易を推進する枠組み。2018年3月に11カ国で署名し、日本、メキシコ、シンガポールニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ベトナムの7カ国で発効済み。TPPには英国が今年2月に加入申請を行ったほか、中国も今月16日に加入を申請した。
=引用終=

www.nikkei.com

【そもそもTPPとは・・・?】

TPPとは環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership Agreement)の略称で、「モノやサービスの貿易取引」や「加盟国間の投資の自由化/円滑化」を進める為に署名された国際協定のことです。

世界の貿易取引はこれまで、WTO(World Trade Organization: 世界貿易機関)が中心となってルール作りや紛争解決をしてきましたが、先進国/発展途上国の多くが加盟をしていることから利害が対立するケースが多くなり、新たなルールが作りづらい状況が続いていました。(2011年に実施されたドーハ・ラウンドは事実上の交渉停止してたりします。。)


このような状況の中で国際取引に関する新たな取り決めを作ろうと思うと、二国間の経済連携協定や地域経済協定が主流とならざるを得ず、TPPはこの流れの中で協議されてきた協定で、2016年に関係国間での署名が完了しました。

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【ペルーで8か国目?そもそも国際協定が発効されるプロセスとは?】

2021年9月19日にペルーでも同協定が発効され、これで8か国目の発効となりました。
しかし、「2016年に署名してたのに何で今頃??」という方も多いと思いますので、条約や協定が発効されるプロセスについて、確認をしておきましょう。

日本の場合、「条約の締結」は憲法第73条に定められた内閣の権限ですが、何でもかんでも締結して良いわけではなく、事前or事後に国会の承認を得る必要があります。国民が民主的に選出した国会が条約発効のプロセスに加わることで、条約においても国民の意思を反映させるというものです。(条約締結過程の民主的統制)*

このプロセスは日本だけでなく、多く民主国家にて採用されておりペルーも例外ではなく、今年7月にようやく議会での承認が完了したということです。

*日本の場合、すべての条約に対して国会承認が必要な訳ではなく、①「法律事項(義務)」を含む条約②「財務事項(予算出動)」を含む条約③政治的に重要で批准が要件となる条約、について国会承認が必要となる。(=大平三原則)


TPPに関してはその協定の本文中で、「関係する国内法上の手続きを完了した旨を書面により寄託者に通報した後60日で発行する」と定められていることから、国内批准の約2か月後に当たる9月19日にペルーでTPPが発効をされています。

 

【ペルーでのTPP発行で何が変わる?】

ペルーと日本はTPPの発効以前から、二国間での経済連携協定を締結しており、2012年に発行しています。
また、TPPでは88%のペルー製品に対して特別税率が適用される一方で、二国間経済協定では98%のペルー製品について特別税率が適用されるなど、税率面では既に継続している二国間協定の方が幅広く、輸出入の観点では日本にとって余り大きな影響は無いように思います。

ちなみに、日本とペルーの間の輸出入の状況については下表のとおりです。

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(JETRO HP(https://www.jetro.go.jp/world/cs_america/pe/basic_01.html#block6)より作成)

 

他方で、ペルーから環太平洋各国への輸出が増えて、ペルー国内の経済が活発になってくれば、日本企業のペルーへの投資が増えてくるかもしれません。

 

以上、ペルーのTPP発行に関連して条約の締結/発行プロセスとペルーとの関係について整理をしました。
イギリスや中国がTPPに参加していくような動きもありますので、他の締結国の国内承認状況と合わせて要CHECKです!

 

[執筆者について]

某都内の国立大学を卒業後、国内メーカーに営業職として勤務する20代男。

大学では法学部にて国際関係/国際法について勉強をしていました。

自分自身の勉強や頭の整理も兼ねて、日々のニュースを題材に為になることを発信します!